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輪るピングドラムの二次創作テキストブログ。 冠晶中心に晶馬総受け。
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2018/10/18 (Thu)                  [PR]
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2012/03/03 (Sat)                  【春サンプル】星空の果て【アンケート】
春コミ、無事にスペースいただけました…! ので、少し気が早いですが、サンプルのうpです。
まだ書き終わっていないのですが……ちょっと死ぬ気で頑張りますね!!><
スペースは、西1さ 34bになります。 A5/ページ数未定/価格未定です。詳細が決まり次第、またお知らせします。
以前書いた「崩れ落ちる」と、支部にアップしている「ひだまりのせかい」というお話とリンクしている部分があります。読んでいなくても、内容はわかる…と思います。
当日は、本を買われた方に、その二つをコピー本にしたものを無料でお付けします。不要な方はお申し付けくださいね。
内容は、冠晶と晶陽と冠陽…というか高倉家です。全年齢向けですが、性行為をほのめかす表現がありますので、苦手な方はご注意ください。サンプルにはその内容は含まれていません!

では、続きからサンプルです!

1.幸福

 こうして高倉家が五人家族になってから、家族みんなでいろいろなことをした。剣山と千江美は、忙しいとはいえどやっぱり子ども達のことをよく考えてくれるいい両親であったから、三人をいろいろな所へ連れていってくれた。潮干がりにも、池袋にある水族館にも行ったし、旅行にだって行ったこともある。
 荻窪駅の隣にあるピングタウンへは、それこそ何回行ったか数え切れない程である。ピングタウンの屋上はちょっとした子ども用の遊び場みたいなものがあり、そこでよく三人で遊んだものだった。ピングタウンに来たことが嬉しくて、全速力で走ったせいで派手に転んでしまった晶馬を冠葉がからかったりしたものだから、しばらくの間全く口を聞かなくなる程の喧嘩をしたこともある。この時は二人とも剣山と千江美にこっぴどく叱られて、むくれながら仕方なく仲直りしたのだった。
 どこかへ出かけることが無くても、学校から帰ってくると家の隣の空き地で遊んだし、雨の日は家の中で三人並んでテレビを見ていた。冠葉は動くのを面倒くさがって、お菓子のくずなんかをゴミ箱へ投げ入れて、それを見た陽毬が母親ぶって注意をしたりする。そのくせに、陽毬は言葉遣いが乱暴なことを晶馬に注意されたりすると、むぅっと膨れて一日中口を聞かなくなるのだ。
 けれどどんなに三人が喧嘩している日であっても、家族五人が揃わないで夕ご飯を食べたことは無かった。剣山の帰りが遅くなろうとも、必ずみんなでいただきますを言うのだ。そうして千江美が作った、毎回必ずと言っていいほど暖かいお味噌汁が付いた、おいしいご飯を食べる。家族揃ってのご飯はとてもおいしいものだったから、それまでどんなに大きな喧嘩をしていようとも、暖かいお味噌汁を前にするとどうだっていいことになるのだ。そうこうするうちに、いつの間にか喧嘩をしていたことなんて忘れてしまう。
 そして高倉家では、家族の誰かが誕生日の日は、とても豪華なものだった。冠葉と晶馬の誕生日である三月二十日はもちろん、陽毬は誕生日がいつかわからなかったから、高倉家に引き取られた日を、誕生日の代わりの日としていた。そんな日は、家族総出でお祝いをする。千江美は必ず手作りのケーキを作ってくれたし、その日はどんなに仕事が忙しくても必ず早めに剣山は帰ってきた。高倉家の家計はあまり裕福な方では無かったから、高価なプレゼントが貰える訳ではない。けれども、誕生日の日に帰宅した剣山の手には、必ず何らかのプレゼントがあったから、それが楽しみで三人で玄関まで走って迎えに行ったこともあった。
 高倉家は、ごく普通の家族だった。兄妹三人は誰一人として血が繋がっているわけではなかったけれど、きっと本当の家族よりもずっと家族らしかった。小さい頃から連れて行かれていた集会には、五人家族になっても、いまだに三人とも連れて行かれていた。それでも晶馬は、それは小さい頃からずっと行っていた当たり前のことだったから、普通とは違うことなのだとはわからなかったし、何の疑問にも思ったことは無かった。
 だからこの頃の思い出は、この先のどんな出来事と比べてもきっと一番輝いていて、何も寂しくなんかなくて、何の不安も感じていない、ただ当たり前のように幸せな日々だったのだろう。
 晶馬は、二回目の人生を過ごしてきた今となっても、この時のことを考えると、少しだけ、泣きそうになってしまうのだ。

~中略~


2.崩壊

 剣山と千江美がこの家から居なくなったのは、それは怖いくらいに、いつもと何ら変わらない日のことだった。
 何の変哲もない朝だったのだ。小さい頃から朝が得意であった晶馬は、早起きして朝食を作る手伝いをする。そうしているうちに陽毬が、眠そうな顔をして目を擦りながら起きてくる。冠葉が起きるのは、いつも家族の中で一番最後だった。そんな冠葉に、晶馬は「もう少し早く起きろよ、布団畳まないと邪魔だろ」と口うるさく文句を言う。
そういう感じで、その日も疑ってかかる方が難しいくらいに日常と変わらない朝だったから、剣山と千江美がどうして夜遅くになっても家に帰ってこないのか、晶馬はしばらくの間状況を上手く把握する事が出来なかった。
 結局この日が、剣山と千江美に会う事が出来た、最後の日となった。冠葉と晶馬、陽毬は、突然高倉家にやってきた大人に何の説明も受けないままホテルに連れていかれて、そこで、剣山と千江美が指名手配されたことを知ったのだ。
 何が起こっているのかなんて、まだ中学生である冠葉と晶馬や、ましてや小学生の陽毬に、理解できるはずが無かった。冠葉と晶馬が生まれた日に起こった、世間を震撼させたという例の事件は、たびたびニュース番組などで取り上げられていたから知ってはいた。けれども、その事件を自分たちの両親が起こしたのだと言われて、どうしてすぐに納得することが出来るだろう。小さい頃から二人に連れて行かれていた集会だって、それが世間的に見れば異常な事だったのだと、そのころの晶馬にはわかるはずがなかったのだ。
 高倉家には、子ども達三人だけが残された。冠葉も晶馬も陽毬も、大きな喪失感を消すことが出来ないまま、この日からこれまでとはガラリと変わってしまった生活が始まることになった。
 それから先の生活は、とても大変なものだった。自分たちが認識している以上に、剣山と千江美が起こした事件は世間に大きな影響を与えていたし、恨まれていたのだ。すぐに、家へのいやがらせが始まった。いたずら電話や壁への落書きはしょっちゅうだった。それまで仲良くしていたはずの学校の知人などはみんな離れて行ったし、本当は三人を保護する立場であるはずの学校の先生や親戚だって、あからさまに関わりたくはないというような態度を取る。
 唯一面倒を見ていてくれた池辺の叔父は、そんな状況を心配していて、子ども達だけで高倉の家に住み続けることに反対していた。そしてそんな状況を見かねたのか、しばらくの間だけでもうちで面倒を見る、という申し出てくれた。けれども冠葉は、それをハッキリと断ってしまった。
 晶馬と陽毬は預かって欲しい、でも自分はこの家に残る。そう言って叔父を見上げていた冠葉は、三人の中で誰よりもしっかりと現実を見つめているようだった。
「どうして冠葉だけ残るんだよ」
 両親が居なくなってから、めまぐるしく変わる状況に付いていくだけでやっとであった晶馬は、冠葉が叔父の言うことに従わず、ハッキリと自分の意見を述べたことに、とても驚いた。
「何だっていいだろ。俺はこの家から離れない」
 冠葉の決意は堅かったから、元々そこまできつく言うつもりは無かったらしい叔父はすぐに折れて、結局冠葉は高倉家に残ることになった。冠葉は恐らく、家族揃って過ごしたこの家を失うことが、怖かったのだ。だから、かたくなに断った。それにきっと、この家から離れてしまうことで、これまでの生活がすべて消えてしまうのではないか、というような不安もあったのかもしれない。
「冠葉だけなんてダメだ、それなら僕も残る」
 家に居る、と決めてしまってからの冠葉は、何の迷いもない目をしていて、真っ直ぐに前を見ていて、それは紛れもなく高倉家の長男のものだった。そうだ、戸惑ってばかりではいけないのだ。陽毬を守ってやれるのは、もう自分達しかいないのだから、しっかりしなければならない。冠葉だけに任せていてはいけないのだ。
 だから晶馬も、冠葉と一緒にこの家に残ることを決意した。僕も残る、と言ってしっかりと冠葉を見据えた晶馬に、冠葉は少しだけ驚いた様子だったけれど、反対することは無かった。
「冠ちゃん、晶ちゃん。私もしばらくしたら、絶対にあの家に戻るからね」
 そう言って、寂しそうにゆらゆらと揺れる瞳で二人を見上げる陽毬を、冠葉と晶馬は交互に頭を撫でて、家から見送った。こうしてしばらくの間、冠葉と晶馬の二人だけの生活が始まることになった。
 陽毬がこの家に戻ってくるまでに、何とか二人で以前のような生活に近づけるのだ。すっかり同じと言う訳にはいかないけれど、陽毬が寂しい思いや怖い思いをしないですむように、どうにかしなければならないと思った。きっとこの時から、冠葉と晶馬は、無条件に陽毬のことを守ってやろうとするようになったのだろう。
 陽毬は剣山と千江美を失うことで、親が自分の元から居なくなるという経験を二回もしなければならなかったのだ。何もかもを諦めきったような瞳で、コンクリートの冷たい床にぽつんと座りながら虚空を見つめていた陽毬の姿が、晶馬の頭に焼き付いて離れない。もう二度と、そんな陽毬の姿は見たくなかった。それに、陽毬を高倉家に連れてきたのは他でもない自分なのだと、その事実が晶馬を捕らえて離さないのだ。責任を感じるだとか、そういう難しいことは当時の晶馬にはわからなかったけれど、これ以上高倉家の事情で陽毬を苦しめてはいけないのだと、そのことだけはしっかりと認識していた。
 けれど、親を二度失ったのは何も陽毬だけではなく、それは冠葉も同じだったのだ。剣山と千江美が指名手配された、と知った日は動揺していたようだったけれど、その後の冠葉はあまりにもしっかりしているように見えたから、晶馬はその事をほとんど気にとめなかった。今思えばそのころの冠葉は、ぴんと張りつめた風船のようなもので、いつ割れてしまってもおかしくないものだったのに。冠葉だって晶馬とは違う意味で、精一杯陽毬を守ろうとしていて、必死に自分を保っていたのだ。
 
 冠葉と晶馬の二人で生活するようになっても、やはり世間からの嫌がらせは続いていた。二人とも、こんなに人から憎まれたのは始めてのことだった。最初の頃はよく、いったい自分達が何をしたというのだろう、と憤っていたものだけれど、慣れとは怖いもので、晶馬はそのうちに家の壁に落書きをされていても、何とも思わなくなっていった。冠葉も晶馬も、心を殺すことを覚えたのだ。一人では到底耐えられそうに無かったけれど、二人だったから何とか平常心を保っていられたのだと思う。
 それでもどんなに慣れたと言っても、外を出歩く恐怖だとか、そういうものが消えた訳では無かった。きっと二人ともぎりぎりに張りつめた状態で、いっぱいいっぱいだったのだ。ただ精一杯に、日々をこなして行くしかできなかった。両親が居たころは手伝い程度しかしたことが無い家事だって、自分たちでこなさなければ生活は出来ない。慣れない料理や掃除、洗濯なんかも、二人で手分けしてやっていたけれど、それだけで随分と時間を取られてしまう。冠葉も晶馬も学校へは行っていたけれど、そこでも周りの状況は同じようなものだったから、二人はお互いを守るようになるべく一緒に行動するようにしていた。とにかく、この頃は、二人とも気が休まる時間がほとんど無かったのだ。
 だからその日に、学校から帰る時に冠葉と晶馬が別行動をしてしまったことは、仕方のないことだった。二人とも少しだけ気が緩んでしまって、お互いのことを気遣う余裕が無くなってしまっただけのことだった。後からどんなに後悔したって、きっとこの事態は避けることなど出来なかったのだ。
 晶馬はこのころ、なるべく人と関わらないようにして過ごしていた。学校に居ても必要最低限の範囲でしか人と話をすることはなかったし、そしてそれは晶馬の周りの人間だって同じだった。何かの異物のように自分を見る視線にも、遠回しにする態度にも、晶馬はとても、疲れていた。そんなものだったから、晶馬は自分が今話しかけられているのだ、ということに気づくまでは、少し時間がかかってしまった。それは、学校からの帰り道に、校門を出てすぐにある裏道に入った所で起こった。とても寒い日で、空はどんよりと曇っていて、今にも雪が降り出してしまいそうな日の出来事だった。
「子どもは学校に来れるんだな」
 声をかけられていることにしばらく気づかなかった上に、言っている内容がなかなか理解出来なかったものだから、晶馬がそれに反応するまでに不自然な間が空いてしまった。
「……何のこと?」
 ようやく振り向いて相手を見やる。恐らく同級生だと思われる男子学生が、数人でこちらを睨みつけるようにして立っていた。見たことがあるような気もするのだけれど、あまり記憶の中に残っていない人達だった。

~中略~

3.絶望

 冠葉が晶馬に初めて抱かれたのは、この頃だった。冠葉は家へ帰る時間がだんだんと遅くなっていて、その日も日付が変わってもまだ帰って来なかった。晶馬はそれでも、律儀に冠葉の夕食も作っていて、高倉家の「ご飯は家族みんなで」という家訓を守るために、冠葉の帰りをに待っていた。そうして時計の針が十時を過ぎると、諦めたように一つため息をついて、自分の分のご飯を食べてしまうのだ。
 こんな日々が、もう長いこと続いていた。陽毬だけじゃなく、冠葉までもがこの家から奪われてしまったようだった。それに、陽毬が入院してからの冠葉の様子がどこかおかしいことも、晶馬は心配でたまらなかった。それまでだって冠葉は女の子に言い寄られたりしていたのだけれど、誰一人としてつきあったりしたことはなかったのだ。
 高倉家の事情があったから、他人と距離を置くことは当然のことであった。そしてそれは晶馬も陽毬も同じであったから、高倉家は三人で身を寄せあって生きるしかなかったのだ。
 それなのに、冠葉は家族以外の、他人の女の子とずっと一緒にいて、家には帰ってこなくなった。
 晶馬の中には、これまで感じたことのないような、どす黒いような感情が、浸食するように広まっていった。しんとした家の中に一人で居ることも、このままだと耐えられなくなってしまいそうなくらいに寂しいのに、冠葉は誰か知らない女の子と一緒に居るのだと思うと、晶馬はたまらない思いでいっぱいになってしまうのだ。
 この頃はまだ、晶馬は人を好きだとか愛するだとかの気持ちは知らなかったから、そのどす黒い感情が俗に言う嫉妬と呼ばれるものなのだと、思ってもみないことだった。
 だから晶馬は、いつも帰りが遅くなる冠葉を心配しつつも、その日もとても怒っていた。何時に帰る、などの連絡もないし、作った料理は虚しくラップがかけられて冷蔵庫に入れられてしまっているし、とにかく晶馬も寂しかったのだ。いつまでも起きて待っているのも馬鹿らしく感じてしまって、晶馬は一人分の布団を引いて、さっさと寝てしまおうと思った。どうせ冠葉だって好き勝手やっているのだから、それぐらい仕方のないことだと思った。
 けれど布団に入ってもすぐに寝付ける訳ではなく、明かりを消してしまった部屋の中は、余計に空しさが広がるものだった。ごろん、と寝返りを打ちながら、なかなかに寝付けずにいると、カラカラと遠慮がちに玄関の扉が開く音がして、ようやく冠葉が家に帰ってきた。晶馬はまだ怒っていたから、話すことは何もない、という意思表示をするように、寝ているふりをすることを決めた。
 だから、冠葉が布団におもむろに入ってきて、丸くなるように膝をかかえていた晶馬を背中から抱きしめたときは、本当に、驚いたものだった。両親が居なくなった頃、どうしようもなく寂しくなって二人で一緒の布団で寝たことはあったけれど、それ以来こういうことは一度だってなかったのだ。晶馬が表情をなくしていた頃も、そして成り行きでキスをしてしまったときだって、別々の布団で寝たのだ。晶馬は驚きのあまり、寝ているふりをしていたことなどすっかり忘れてしまって、おもわず冠葉に声をかけてしまった。
「兄貴、どうしたの」
「何だよ起きてんじゃないか」
 冠葉は少しだけ驚いたようすで、それでも晶馬の布団からは出ていこうとはしなかった。背中から感じる温かさがどうにも居心地が悪くて、晶馬は身を捩って冠葉から離れようとした。なんだか、浸食されてしまうような気がしたのだ。けれど冠葉はそれを許してはくれなくて、押さえつけるように回された腕をほどくことが出来なかったから、晶馬はしばらくして大人しくその中に身を預けた。
 冠葉の手が小さく震えていることに、晶馬は気づいてしまった。背中に顔を埋めるようにしている冠葉の表情はわからなかったけれど、そんな手をふりほどいてしまうなんてことは、晶馬には出来るはずがなかったのだ。
「兄貴、寒いの?」
 検討違いであるとは思いながらも、逡巡したあと口から出た言葉は、当たり障りのないものだった。温かさとともに、知らない女の子のにおいが漂ってくる。
「……少し」
「そっか」
 晶馬を包みこむようにまわされた腕が冷たくて、それを慰めるために、自分の手をそっと添えた。晶馬は、さっきまで考えていた怒りだとかは、いつの間にかすっかりと忘れてしまっていた。どうしようもなく寂しかったはずなのに、それすらも跡形もなく消えていった。冠葉に言いたかったことも全てどうでもよくなって、ただ、もうここから離れないで欲しいな、と思った。

「……陽毬が、いないんだ」
 けれど、晶馬の背後から聞こえた声は、まるで縋りつくかのように切ないものだった。
「家に、陽毬が、いないんだ」
 冠葉の声が少し震えていることに気づいたけれど、晶馬は何も言うことが出来なかった。冠葉がこうして自分に弱音を吐くことは、これが初めてのことだった。いつも晶馬を助けてくれる立場であった冠葉が、こんなに弱りきっていたことに、晶馬はようやく気がついたのだ。とまどいつつも、体に回された手をそっと握ると、冠葉も晶馬の手を握り返してきた。
「どこにも、いないんだよ」
 だんだんと悲痛を帯びていく声に耐えきれなくなって、晶馬はようやく冠葉の方を振り返った。相変わらずしっかりとした力で抱きしめられていたから、体の向きを反転させるだけでも一苦労だった。そうしてようやくのぞき込んだ冠葉の顔は、ただ一面に絶望が広がっていて、今にも泣き出してしまいそうに見えた。晶馬はそんな冠葉の様子に驚いて、小さく息を飲み込んでしまった。それはあまりにも、辛そうな表情だった。


 

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